【給付基礎日額 前編】各種年金で適用される給付基礎日額とはなにか

労働者災害補償保険法
記事でわかること
・給付基礎日額とはなにか
・通常の給付基礎日額が適用されないケース(特例の場合)はどんなときか

「給付基礎日額の〜日分」というのは、労災保険に関する単元で給付基礎日額という単語がちょくちょく出ていたが、そもそも給付基礎日額とはどういったものなのか、具体的に説明していく。給付基礎日額とは、労働者がふだんもらっていた給料の額の目安のことをいい、労災保険の給付額を算定する基礎となる大事なものだ。

給付基礎日額の計算式

 給付基礎日額の計算式は、労災保険の適用など算定事由が発生した日(※)以前の3ヶ月間に支払われた賃金の合計で表される。

※算定事由が発生した日とは、事故が起きた日または診断によって症状が確定した日。
※計算結果に小数点があるときは、1円に切り上げる

通常の給付基礎日額が適用されないケース

私傷病休業者の場合

 私傷病休業者とは、平均賃金の算定期間中(※事故が起きた日、症状がわかった日以前の3ヶ月の間)に、業務外で怪我をしたり病気になったりして休業した期間がある人のことを指す。私傷病休業者の場合は、以下いずれかの高い額が給付基礎日額として適用される。

① 通常の平均賃金相当額(上の計算式の値)

私傷で休業した期間の日数とその期間中の賃金額を、賃金の総額から控除して計算した平均賃金相当額

じん肺患者の場合

 じん肺患者とは、小さな土ぼこりや金属の粒、木の屑などを吸い続けることで、肺の機能が悪変化してしまう疾病のことをいう。第二次産業の労働者に多い症状だ。じん肺患者の場合は、以下いずれかの高い額が給付基礎日額として適用される。

① 通常の平均賃金相当額(上の計算式の値)

粉じん作業以外の作業をすることになった日を算定事由発生日として計算した平均賃金相当額

船員の場合

 船員の場合、乗船勤務中と陸上休暇中で給与が2倍近く違う。そのため、この乗船・下船が算定期間に入ると、労働者が給付をもらい過ぎor足りな過ぎというようなことが起きてしまう。

 そのため、船員の場合は1年間乗船する船員を対象に算定期間は事故が起きた日、症状がわかった日以前の1年の間を給付基礎日額とする。ただし、以下の条件のいずれかを満たす必要がある。(給付基礎日額は、あくまで労働者の平均的な給与を計算するのであって、船で病気が起きたからといって給付基礎日額が格段と大きくなるというわけではない。)

1. 固定給が乗船中によって増加するなど賃金の変動が定められている場合
2. 固定給が下船することで減給する場合
3. 乗下船に関わらず固定給は一定だが、諸手当が変動する場合

自動変更対象額

自動変更対象額とは

 自動変更対象額とは、給付基礎日額の最低保障額のことを言い、その額は3,940円と定められている。労働者の平均賃金相当額がこの自動変更対象額(3,940円)に満たない場合、労働者の給付基礎日額は自動変更対象額(3,940円)となる。

自動変更対象額が変わるケース

 原則、平均賃金相当額が自動変更対象額を下回る場合は、自動変更対象額が適用されるが、例外としてスライド改定(下記参照)が行われる場合は、自動変更対象額以下の賃金が適用されることになる。2つのケースがあるので、ここで抑えておきたい。

memo  スライド改定とは

 給付基礎日額は、怪我をしたときや症状がわかった日の3ヶ月の期間で算定すると述べてきたが、リーマンショックやコロナショックのといった世の中の情勢によって賃金の相場が大きく変わることがある。そこで、賃金の相場の変化に応じて労働者の給付基礎日額が変わる処置が行われる。これを”スライド改定”という。(詳しくは次回を参照。)

①スライド改定によって、平均賃金相当額が自動対象変更額を上回る場合

もともとの平均賃金相当額が適用される

②スライド改定が行われても、平均賃金相当額が自動対象変更額を下回る場合

自動変更対象額にスライド率を割った額が適用される

例えば、労働者の平均賃金相当額が3,900円でスライド改定が行われ、110%アップしたとき、変更後の給付額は3,900円になる。(3,900円を110%掛けると4,290円となり、自動変更対象額を上回るため、①のケースによりもともとの平均賃金相当額3,900円が適用される。)

自動変更対象額の変更

下記のようなケースで自動変更対象額が変更される。

① 平均給与額(※)が変更になった場合

→その上昇or低下した比率に応じて、翌年度の8月1日から変更される。

② 自動変更対象額の一の位が0以外(1~9)の場合

一の位を四捨五入した数値が適用額となる。

 また、自動変更対象額を変更する場合は、当該変更年度の7月31日までに厚生省によって公表される。

※平均給与額…厚生省が毎月作成する毎月勤労統計で、労働者一人当たりの月例給の4月〜翌3月分を12で割ったもの。イメージとしては、スライド改定の説明で前述した賃金の相場に値する。

以上、今回は給与基礎日額 前編についてまとめた。スライド改定の話が出てきて、少しややこしくなったので、次回の給与基礎日額 後編で給与基礎日額とスライド改定の関係について具体的に説明していく。

 

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